世界が雨に啼く音

I CAN'Tで語る言葉たち…   

殺したい倶楽部

『殺したい倶楽部』

そこは日頃溜まったあらゆる憎悪を発散させる場所

その場所は、誰にも言ってはいけない完全な秘密の場所

何故知ってしまったのかさえ覚えていない僕はとある都会の雑居ビルの路地裏へと入って行く

しばらく歩いて行くと光さえほとんど差し込まない薄暗いコンクリートの並びにひとつのドア

まさしくここが『殺したい倶楽部』だ

キィィ…… 軋む音と共にドアを開けると室内は非常に薄暗くて埃っぽい

係員に見学をしたいと伝えると快く応じてくれた

「こちらへどうぞ」

奥の重い扉を開けると、ものすごい怒号が聞こえてくる

怒号、悲鳴、何かを叩く音…明かりは先ほどよりは明るいがまだ薄暗く、その中で殴り合いをしている人もいてそれぞれの音が折り重なって凄まじい不快音だ

一体これはなんなんだ…

「殺したい倶楽部…ここは制約に従い、殺人と致命傷以外なら何をし合うのも自由。人を殴っても、血を流しても、泣き叫んでも、呪ってもいい。日頃のストレスを発散することが出来ない人たちがすべてをぶちまけて頂く場所です。アフターケアも万全で、どこかで知ってお越しくださったお客様には笑顔で歓迎いたします」

衝撃的な光景に目を奪われながらも室内を一通り見るために係員と奥へと歩いていく

髪をかきむしり、瞳孔の開き切った目で誰もいない空間と戦う男…おそらく薬物でも打って幻覚を見ているのだろう

中年男性の二人組は取っ組み合いで殴り合いをしている

若い女性は声を枯らしながら泣き叫んでいる

奇妙な世界だ、まるで現実世界から遠く離れたような、そんな場所

欲望を垂れ流し、子供のように荒れ狂うことで明日も頑張って行くのだろうか?

係員は僕に入会用紙を渡して、気が向いたらいつでも歓迎いたします、と囁いた

受付に一礼して、殺したい倶楽部のドアを開けるとざわざわと都会の喧騒が聞こえてくる

都会のスピードに疲れて、頭の薄い上司に不本意に怒られて、もうどうしようもなくなったらここへ来よう…